Maple story
それから数十分。狩りを続ける私達だったが、私は今までに無い『ある事』に気付いた。

いつもより、メルや収穫品などの…アイテムの出現量がとても多いのだ。

「今日はアイテムの出が良いな。ゾンビはアイテムを落としやすいのか?」
「あれ、プレイヤーさん。ご存知無いんですか?」
「ゾンビは関係ないでござるよ。SDTでござるよ!プレイヤー殿!」

「S…DT?」

後で聞いた話だが、この世界には24時間中2時間だけ、モンスターが持つアイテムが2倍になる時間があると言う。その時間は1時間ごとに割り振られ、チャンスは一日に2回あるのだそうだ。

「まさかSDTを知らないとは思わなかったでござるよ。」
「きっと、気付いていないだけで、体験したことはあると思いますよ!」

24時間中の2時間、そういった時間が存在するのなら、私が今まで気付かなかった、と考えるのが定石だろう。

しかし、これは好都合だ。『ゾンビのなくした奥歯』を集めている私達にとって、これはチャンスなのではないか?

「この時間内なら、あの二人よりも多く収穫品を集められそうだな。」

「え」
「え?」

二人の目が点になる。

「プ、プレイヤーさん・・・SDTは、みんな共通ですよ・・・」
「そ、そうなのか。」

また、私の知識の無さを披露してしまったようだ。・・・恥ずかしい話だ。


「まったく。おヌシの知識の無さにはほとほと呆れるわ!」


サボっている者に言われたくない・・・と、思った。



そして、一時間はあっという間に過ぎていった。集中していると、時間が短く感じる・・・と言うのは本当のようだ。

一時間の経過と共に、武士道剣士が死んだ木の森の奥から、姿を現した。

「さあ、ゲーム終了です、プレイヤー君。」
「ああ、そうだな。」
「その顔を見ると、なかなか沢山の奥歯を集めたようですね・・・」

私が稼いだ歯の数は、ざっと400個といった所だ。投げ侍や魔女さんはもう少し多く稼いでいることだろう・・・

魔女さんと投げ侍、そして初心者王が此方へ駆け寄ってきた。

「プレイヤー殿、これが拙者の稼いだゾンビ歯でござる。お納めくだされ。」
「はい、プレイヤーさん!これだけ集めれば・・・」
「ほれ、15個も集めておいてやったぞ。ありがたく取っておくがよい。」

私は皆から集めたゾンビの歯を、武士道剣士の前に出した。

『合計・・・1350個!どうだ、武士道剣士よ!』

「ほう・・・」

しかし、武士道剣士はその言葉に臆する事無く、余裕の表情を見せている。私達の負けなのだろうか・・・?

「なかなかやりますね。此方は・・・800個といった所でしょうか?」

その言葉に、投げ侍が飛び跳ねて喜ぶ。

『勝った!勝ったでござるよ!プレイヤー殿ーっ!』

「まあ待って下さいよ。これは僕一人の成果で、斬り盗賊さんの分は含めていないのですよ。」

「なんだって!?」

なんと・・・この男は、一人で800個もの奥歯を稼いだというのか。

「さすが【ナイト】・・・ですねぇ。」

斬り盗賊君の『サベッジスタブ』の力は、私は良く知っている。彼の『狩り効率』を考慮すれば、私達一人より確実に、上を行っていることだろう。

この勝負・・・・負けたか?

「さあ、斬り盗賊さん、君の成果を私にお教え下さい。」

しかし、斬り盗賊君からの返事はない。

「どうしました?・・・そう言えば、姿が見えませんが。」


武士道剣士の心配をよそに、彼は姿を現した。

「tada」
「misu」
「ただ」

「おかえりなさい^^」
「師匠〜っ・・・」

私は、単刀直入に聞いた。

「斬り盗賊君、君はいったい、いくつの奥歯を稼いだのだ?」

「え」
「わすれた」

「忘れたって・・ご冗談を!ETC欄をみて確認して下さいよ。」


私は固唾の飲み、彼の言葉を聞いた。


「いっぱいだったから」
「うった」



『う・・・』
『売ったでござるかー!?』


なんと彼は、街へと戻り収穫品を全て売ってしまったようだ。
これでは勝負にならない・・・

「・・・はあ」

武士道剣士は黙り込み、俯いている。

「師匠〜、主旨をわかったいたでござるか?」
「ごめ」
「わかってなかったんですね^^;」


武士道剣士は顔を上げ、私に武具を差し出した。


『負けは負けです。僕のドロップ品は貴方方のもの・・・好きにして下さいよ。』
「え、でも、これじゃ勝負には・・・」
「勝ちは勝ちでござるよ!魔女殿!」

投げ侍は喜んでいるが、魔女さんは困惑している。このままこの武具を受け取っても良いのだが・・・

斬り盗賊君がこの勝負の趣旨をちゃんと理解していれば、確実に私たちは負けていた。

私のプライドにかけ・・・こう言う結論を下した。

「・・・武士道剣士、この勝負、私達の負けだ。斬り盗賊君なら550個ほどの穴など埋めていただろう。それに・・・貴方の潔さに感服した。」

『えええええええええ〜〜〜〜っ!!??プレイヤー殿!!何を言い出すでござるか!』

「投げ侍さん黙っててさい!!」

魔女さんが投げ侍を静止する。

「うむ。敵ながら天晴れ、とはこの事である。おヌシも部下に加えてやっても良いぞ?」初心者王も彼を認めたようだ。

・・・武士道剣士は、静かに語りだした。

「・・・貴方方は、変わった人ですね。僕が負けを認めたというのに、君もまた負けを認めるとは。」

「当然のことを言ったまでだよ。それと・・・」

「それと?」

「私をギルドに。【聖光バスター】へ入団させて欲しい。」


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