私達は気を取り直し、冷気の平原へやって来た。
「さあ、気を取り直して・・・と。ここが分かれ道です!あそこに山が見えますよね?あそこを登るんです・・・と、あれ?」
魔女さんが何かを発見したようだ。指差す先に、大きなモップを構えた男が座っていた。
「あれれ、人がいますね?どうします?CH変えましょうか?」
「当たり前でござる!!気付かれる前に逃げるでござるよ!!」
「?」
それもそのはず。その男は、私の顔見知りの人物。巨大なモップを掲げ、大金持ちの風貌をもつその男。
間違いなく『初心者王』だ。
・・・先程も似たような事があったな。
「モップでは、大金持ちの風貌には見えませんけど」
「そんな事はどうでも良いでござるよ!プレイヤー殿、早くCHを・・・」
『無礼者!!全て聞こえておるわ!!』
例によって、全部聞こえていたようだ。しかし、まわり込むのが早すぎる。
投げ侍が驚愕して尋ねる。
「ど、どうやって先回りしたのでござるか!?ジパングから!?」
「余の財力を持ってすれば不可能など無い!こんな事もあろうかと【テレポストーン】を用意しておいたのである。」
そう言えば・・・聞いた事がある。知りあいの人物の居場所まで、瞬間移動をすることのできるアイテムが存在すると。もしやそれが『テレポストーン』なのだろうか?
「先程コソコソしていたのは・・・こういう事であったのだな。おヌシら!!余をのけ者にする気だったのであろう!?」初心者王が激怒して言った。
「全部ばれてるみたいです・・・」
「こうなっては仕方ないな・・・」
そして初心者王は続けた。
『余もゾンビ狩りに参加させい!!さもないと、家臣から降ろすことになるぞ!』
脅し文句のようだが、逆効果でしか無い。ここぞとばかりに、投げ侍が反撃する。
「それなら喜んでのけ者にするでござるよ。」
『えっ・・・いや・・・その、うむ。仕方ない。家臣から降ろすのは勘弁してやろう。だ、だから余もゾンビ狩りに連れていってたもれ・・・』
初心者王の顔に焦りが見える。共に行きたいのなら、素直に言えばいいものを。
「プレイヤーさん、連れてってあげましょうよ。」
「えっ!!魔女殿!?」
「投げ侍さんは黙っててください!」
確かに、ここで彼をのけ者にしてしまうのは酷だ。彼は本当は『寂しがりや』なのかも・・・しれないからな。
「わかった。ただし、自分勝手な行動はしないで欲しい。それさえ守ってくれるなら、歓迎するよ。初心者王。」
そう言うと、初心者王の表情が明るくなった。しかし、それを隠すように背を向ける。
そして、こう言った。
「こ、コホン!それでこそ我が家臣46号じゃ!うむ。苦しゅうない。」
「45号ではないのか?」
「ぶ、無礼者!余の揚げ足を取るとは!」
「また始まったでござる!」
魔女さんがくすっと笑みをこぼし、言った。
「さあ、行きましょうか!『死んだ木の森』へ!」
魔女さんの案内で、私達は『冷気の平原』に聳える絶壁を登る・・・
-氷の谷-
絶壁の最下層地点、氷の谷。この絶壁に頂上は存在するのだろうか・・・?そう思わせてしまう位、高く険しい絶壁だ。
『うわぁ〜・・・』
『頂上が見えないでござるよ・・・』
だが、この辺りも先人が吊り橋やロープを残してくれている。それらを伝い、頂上を目指す事ができる。しかし、その道は全て、モンスターの通り道でもある。そう簡単には先へ進む事ができまい。
「・・・無事に通れる道は無いようだな。」
「手を出さなければ大丈夫ですよ。」
その言葉に、投げ侍が笑いながら言う。
「魔女殿〜。ジュニアイエティなんて怖がっていたらゾンビなんて狩れないでござるよ。」
「むっ・・・。でも、そのジュニアはですね・・・」
魔女さんが何か言いかけたが、時既に遅し。投げ侍はジュニアイエティを攻撃し始める。
「あ、ダメですってば!」
「ええぞええぞ!その調子であるぞ、侍よ!」
初心者王がはやし立てる。その間に、1匹のジュニアイエティはあっさりと倒れた。投げ侍がこちらを向き、ちょっと威張って言った。「ほら、魔女殿。心配無用でござろう?」
「おい、投げ侍!」
「何でござるか?プレイヤー殿。」
『様子がおかしい!』
なんと、倒したはずのジュニアイエティが起き上がる。そして・・・みるみるうちにその身体は巨大化してゆく。
「ま・・・まずいですよ〜^^;」
「な、なんでござる〜!?」
先程の小さなモンスターの面影は殆ど無い。エルナスの民が恐れる雪男・・・『イエティ』が私達の前に立ちはだかった。
『さあ、出番であるぞ!家臣ども!』
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