Maple story
この地域に分布するモンスターは、
さほど強いモンスターではないらしい。
塔のあちこちに点在する『スキューバペペ』を
軽く蹴散らしながら、私達は塔の出口へと向かった。

「鉾娘。これでざっと50匹は片付いたのではないか?」
「だなwさ、そこから外に出よう」

塔を出ると、今まで見たことも無い、美しい光景が広がる。
太陽の光に照らされ、青く輝く海。
ゆらめく海草。色とりどりの珊瑚礁。

「ここからが本番だなw」

【ハイパーボディ】!

鉾娘が補助魔法をかけ、戦いに備える。
私も、このような補助魔法が欲しいものだ。


・・・少し泳いだところに、小さなオットセイのモンスターが現れた。
これが『ジュニアシール』なのだろうか?

「こいつか?」
「さっさと片付けよw」

私が武器を振りかざし、モンスターを倒そうとした、その時。
私の目の前に、青紫色の剣を構えた剣士が姿を現す。

そして彼は、こう言い放った。


『やれやれ・・・横狩りですか?』

横狩り。他人の狩りを邪魔する行為の事だ。
この世界で一番忌み嫌われていると言っても過言ではない・・・
私は、そのような事をしてしまったと言うのか・・・

「・・・すまない。貴方の姿が見えていなかったのだ。」
『狩りを始まる前にマップをすべて見て周る事は、基本中の基本ではないですか。まったく、そんな事も知らないのですか。』

私がうつむいていると、鉾娘が言った。

「ちょwプレイヤーs、まだ手は出してないんだから、謝る事はねーよw」

「今、僕が注意しなければ、狩り始めるつもりだったでしょう?そちらの女性も失礼極まりないですね。」

「むぐ・・・」

確かに、こちらにも非はあるが・・・
彼の言動は少々引っかかるものがある。
私達は、故意に横狩りをしようとしたわけではないのだから。

鉾娘が困り顔で言う。
「どうする?こんな奴がいたんじゃ、とてもじゃないけど人形、集められないよ。」

「そうだな・・・」

駄目で元々だが、私はその剣士に尋ねた。

「剣士よ。少しの間だけ、私達もこの場で狩りをさせて貰えないか?オットセイの人形を集めなければならないのだ。」

しかし・・・彼はこう言い払った。

「丁重に、お断りしますよ。僕だってオットセイの人形を集めているのです。第一、あなた方の都合は僕には関係ありませんから?」

確かに筋は通っているが・・・酷な事を言う人だ。

「プレイヤーs、他をさがそ。あたし、こんな奴と一緒にいたくない」

鉾娘は一刻も早く、この場を離れたいようだ。
しかし、私達以外にもオットセイ人形を集める人がいるとは。
少々・・・気になる。

「・・・ヒューズか?」
私がその名前をもらすと、彼はこちらを見て言った。

「もしや・・・あなた方もヒューズに?」

「オットセイ人形を壊してしまってな。10個持って来いと言われてしまって。」

私ががそう話すと、彼は驚いた様子でこう言う。

「何ですって!?それじゃあ、僕と全く同じではないですか!?」


「どう言うことだ?」

・・・何だか、おかしい事になってきた。
彼も研究室に入り、オットセイの人形を壊してしまった。
そして、現物を10個もって来いと、せがまれた。

これでは本当に、私達と同じではないか。

「ヒューズはわざと、オットセイ人形を壊させたって事?」
「しかし先程の事は、初心者王と私達が争っている間に起きた事だが・・・」

私達が考え込んでいると、剣士の男は言った。

「・・・状況がよく飲み込めませんが、あなた方もこの場で人形を集めるといい。」

「は?wどうしたんだよ!w」

彼の急な心変わりに、鉾娘は驚いているようだ。
・・・彼は続けた。

「・・・しかし。ヒューズの事が気になりますのでね。人形を渡しに行く時は、僕も同行させてもらいますよ。」

「・・・わかった。」
「気に食わないけど・・・しょうがないか。」

彼の名は『武士道剣士』と言う。
その剣士の名の通り・・・『ソードマン』だ。

「ソードマン」「スピアマン」「ページ」・・・
三種の戦士が一度に集まったのは初めての事かもしれない。

それはともかく、私達はジュニアシールを狩り始めた。

「ブレイブは必要ですか?」
「おうw」

「まったく、面倒ですね・・・」
「ちょwwじゃあ聞くなよwww」

彼もまた、補助能力を備えているらしい。
『ブレイブ』とは、攻撃力を上昇させると言うものらしい。
その効力ゆえに、防御力を少し犠牲にしてしまうのだとか。

二人の補助魔法を受け、暫し狩ること十数分。
思ったより時間はかかったが、オットセイ人形を10個ずつ集める事が出来た。

「ふう・・・意外と落とさないもんだなw」
「さあ、ヒューズの元へ向かいましょう。・・・真相を聞き出さなければ。」

「ああ。」

私達は再び、ヒューズのいる研究室へと戻る。

私達がヒューズの元へ戻ると、にやりとした表情でこっちを見た。
「おお、お前らか。どうだ。オットセイちゃんは集まったか?」
「ああ。集めてきた。だが・・・」

私は続きを言おうとしたが、武士道剣士に続きを言われてしまう。

「あなたは僕たち冒険者にわざと人形を壊させ、そして壊した数よりも多くの人形を集めさせましたね?僕一人なら引っ掛ける事が出来たのでしょうが、同じこと2回も繰り返すとは・・・愚かですね。」

武士道剣士が全て言い放つ。
しかしヒューズは焦るどころか、苦笑いして言った。

「おいおいお前ら・・・何の話だよ!確かにオットセイちゃんは欲しかったが、本当の目的は別にあるんだぜ。」

「別の目的?」
「なあに、俺の研究に付き合ってもらおうと思ってな・・・」

彼の話では今、空気の玉無しで水中を自在に歩く事のできるアイテム・・・
『水中ボンベ』を開発しているのだと言う。

しかしこの場所ではその材料が手に入らず、
腕の立つ冒険者を探しているのだとか。

「それで、この人形を集めさせたのか?」

「オットセイちゃんを集められるほどの冒険者なら、俺の研究の手伝いは勤まると思ってな。まあ、さっきいた金持ち野郎でも良かったんだけどな。」

どうやら彼は、私達を試していたようだ。
金持ち野郎と言うと・・・『初心者王』の事だろう。
そう言えば、彼の姿は見えない。

「初心者王の姿が見えないが・・・」
「え!?依頼の話はどうなったの!?wあたしたち、騙されたの!?」

・・・鉾娘が慌てふためいていると、横穴から何者かが顔を出した。

「遅かったではないか!余を誰と心得る!」
この台詞は間違いなく、初心者王だ。

「初心者王よ、スキューバペペを倒して来たぞ。これがその証拠・・・シュノーケルだ。」

私がそのシュノーケルを見せると、彼は満足したように言った。

「うむ!ご苦労!では、余は行くぞ。」

彼はそのまま、その場を立ち去ろうとした。しかし、あの約束はまだ果たされていない。勿論、鉾娘は黙っているはずが無かった。

「ちょw約束のメルは!?踏み倒す気!?」

「馬鹿者!余がおヌシらにタダでモノを授けると思うか!空気の玉をくれてやったであろうが!それでチャラであろう。」

「ううう、そう言われれば・・・!!」

確かに、『空気の玉』はただの空気と言う訳ではない。
特殊な水中用アイテムなのだ。
それをただで貰えると考えたら・・・虫が良すぎる。

「鉾娘、これは一杯食わされたようだな。」
「うう、納得いかない・・・(TT)」

「それで、酸素ボンベの材料と言うのはどんな物なのでしょう?」
「ああ、それはだなあ・・・」

武士道剣士がヒューズと何か話している。どうやら、依頼の話のようだ。

一通り話し終えたところで、彼は私達に言った。
「プレイヤーさん。どうやら鋼の塊とネジを集めてくれば、酸素ボンベを作ってもらえるようです。」「ネジと・・・」「鋼鉄?」

「僕は今からでも集めに行こうと思います。どうです、あなた方も?」

彼は私達を材料集めに誘っているようだが、鉾娘の嫌そうな顔を見ると・・・
今回は遠慮した方が良さそうだ。

「折角の誘いだが・・・少々疲れてしまったのでな。また別の日に集めに行くとするよ。」

「そうですか?では、僕は先に帰らせてもらいますよ。」
そう言って彼は、取り出した牛乳を飲み干し去った。

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