「・・・王?」
大きな酒瓶のような物を抱えたその男は、
私達とはどこか、違う雰囲気を醸し出している。
『王』の名に負けぬ雰囲気を。
「全く…余を誰と心得る!余は王なるぞ!」
「あんたさあ、何様のつもり?一応、謝ったでしょ。」
「なんと!!無礼を働いた挙句に暴言まで!・・・小娘!余を誰と心得る!」
・・・エンドレス、とはこの事か。
その時、王と名乗る男のさらに後ろから
もう一人の影が見えた。
『うるせぇーーっ!!』
「うわっ!・・・もう一人いたのか。」
研究者風の男は、凄い剣幕で続けた。
『お前らのせいで、俺のオットセイちゃんが壊れちまったじゃねえか!!』
「オ、オットセイ・・・ちゃん?」
足元を見ると、オットセイの人形…らしき物と、
その破片が見えた。
・・・どうやら、今の騒ぎで壊してしまったらしい。
「す、すまない…」
『すまないで済む事か!弁償してもらうぞ!』
「・・・コホン。」
王と名乗る男が、
軽い咳払いをして、ゆっくりと研究者風の男へ近づく。
「まあまあ、落ち着きたもれ。余を誰と心得る?余は王なるぞ。」
そう言って彼は、懐からメルの束を差し出した。
「これで足りるであろう?研究者?」
「わっ!すげっ!w凄い大金w」
鉾娘も思わず声を上げる。
無理も無い。彼の差し出した札束は、
今まで私達が見た事も無いような大金だったからだ。
そして、金を差し出された男も、
目を広げ戸惑っている様子だ。
「お・・・!!おお・・・!!!」
しかし、すぐに顔を横に振り払い、言った。
『か、金でどうこうなる物じゃねえ!現物で弁償してもらうからな!』
すると、王と名乗る男は札束を引っ込める。
「ほう・・・この金はいらない、と申すか。おヌシ、何が望みだ?」
『だから、現物で弁償しろって言ってるんだよ!』
・・・このままでは、らちがあかない。
私は二人の間に割って入り、こう言った。
「おいおい、落ち着いてくれ。
私たちがその・・・オットセイの人形を持ってくれば良いのだな?」
「そこの兄ちゃんは話がわかるな。オットセイちゃんは…」
彼の話によれば、オットセイちゃんもとい、
『オットセイの人形』は
『ジュニアシール』と言うモンスターが持っているらしい。
「そうだな・・・それを、10個ほど持って来てもらおうか。」
「10個も?」
「そんなに集めてどうする気だよ!w」
「ゴ ゴホン。どうでもいいだろう!」
恐らく、それが彼の…『ヒューズ』の趣味、なのだろう。
「わかった。人形10個を持ってくればいいのだな。」
「面倒な事になったな・・・w」
私と鉾娘が部屋を出ようとしたとき・・・
あの王と名乗る男が言った。
「おヌシ!深海へ行くのだろう?それなら、スキューバペペは知っておろう?」
「スキューバペペって言うと、あのペンギンでしょ?それがどうしたのよ?」
「オットセイ人形を持って来るついでに、スキューバペペを50体ほど倒してきてたもれ。」
『はぁっ!?』
彼は私達に、ついでの仕事を頼もうとしているようだ。
・・・しかし、先程の騒動、彼にも原因はあるのだが…
「貴方もオットセイ人形を取りに行くのではないのか?」
「なんと!信じられぬ!おヌシは余を誰と心得る!!余は王なるぞ!」
・・・どうやら彼は、ここを動く気はないようだ。
鉾娘が呆れて言う。
「あ、あんた・・・何様のつm・・・おっとw」
また同じ事を繰り返すところだ。
しかし彼は何故、スキューバペペ退治を頼んだのだろうか。
「あやつらは、通行の邪魔なのだ。余が通る道を阻むなど、無礼きまわり無い!」
「ちょwそれくらい自分で倒しなよww」
「なあに、ただとは言わぬ。・・・これで引き受けてくれぬか?」
鉾娘が差し出された札束。
先程ヒューズに出したほどではないが・・・大金だ。
そして、その札束を見た鉾娘が
手のひらを返したように言った。
『よーし!wプレイヤーs!!さっさとペペ狩り行くぞーーっ!!www』
「おいおい・・・」
私達は二人の依頼を受け、
再び深海へと潜ってゆく。
「とは言ったものの、さすがに空気が無いのは辛いな・・・」
アクアロードはかなり深く広い、深海の海だ。
先程の調子ではとても先へは進めない。
鉾娘が気楽に言う。
「考えてもしょうがないんじゃね?w」
「それもそうか・・・」
私たちが下へ行こうとしたところ、
先程の穴から、あの男の声が聞こえた。
「なんだおヌシら、まだそこにおったのか。」
「偉そうに・・・」
「余も鬼ではない。この『空気の玉』を授けようぞ。」
そう言って、彼は『空気の玉』と言うものを幾つかほおリ投げる。
私と鉾娘がそれを受け取るのを見ると、続けて言う。
『その道具を使えば10分間は呼吸ができるのじゃ。それがあれば容易に切り抜けられるであろう?』
「あ、ありがと」
「すまないな。え〜と・・・」
彼の名前をまだ知らない私は、口篭もる。
それを察したか、彼は名乗りだした。
『余は【初心者王】。『初心者』の王者であるぞ。』
初心者。私がこの世界に来て、初めて経験した職種だ。
しかし彼は・・・私達と同じか、それ以上のレベルだ。
何故彼は職業に就かないのだろうか?
『王』たる所以なのだろうか。
「ほれ、何をしておる。空気の玉が勿体無かろう?早よう行け。」
「わかったってばw」
私達は『空気の玉』を使い、奥へと潜ってゆく・・・
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